日本登山医学会代表理事より ご挨拶

臼杵 尚志

香川大学医学部附属病院手術部

臼杵代表理事1 2019年6月の総会で、一般社団法人日本登山医学会の代表理事を拝命いたしました臼杵尚志です。就任に際しまして、一言ご挨拶を申し上げます。

 日本登山医学会は、1981年に創立された日本を代表する唯一の登山医学に関する専門家の団体で、英語では "Japanese Society of Mountain Medicine"と称します。"Society of Mountain Medicine"という言葉を世界に先駆け、初めて使用した学会です。2005年5月に日本登山医学会に発展し、2013年5月には一般社団法人日本登山医学会として新たな一歩を踏み出しました。現在では会員番号が2000番を窺う大きな団体となり、それに伴って社会的責任も重くなっています。

 本学会の研究分野は、低酸素分圧・寒冷・紫外線曝露等の高地環境が各臓器機能へ及ぼす影響、高所での運動やトレーニング法、水分・ミネラルの摂取法等極めて多岐に渡っていますが、とりわけ急性高山病などの高所障害、その中でも致命的な高地肺水腫等の研究には力を注いでおり、メカニズムの解明だけでなく医学生理学的背景としてのゲノム解析等にも及んでいます。このような高所医学研究をさらに推進する目的で、旧富士山測候所を活用した共同研究事業も展開しています。
 一方、山岳地域での診療や救助にも関与し、野外での緊急対応や、低体温症・凍傷・低酸素症への対応等に関する知識の向上・普及を図っていますが、この活動を通じて、国内外の登山活動・トレッキング・高地を訪れる海外旅行の安全に貢献しています。このため、医療関係者や運動生理学等の研究者ばかりでなく、登山家や一般登山者、救命救急士、登山や高所での安全・健康に関わる山岳関係者等多種多様な会員で構成されています。

 本学会員が運営に関わる「山岳診療所・救護所」では診療活動の傍ら共同で収集・解析したデータをスポーツ庁等へも報告し、「登山者検診ネットワーク」では海外の高所地域に出かけるトレッカー等の医療相談を行っています。また、国際的にも認定されている「認定山岳医制度」では多くの山岳医を育成しており、これらの事業を通じて安全登山の推進に寄与しています。

 私は、歴代の代表理事、中島道郎・小林俊夫・松林公蔵・増山茂の諸先生方のように国際的に活躍して来た者ではありません。代表理事という重責を担うには少々力不足と思っておりますが、長く山岳診療所での診療に関わってきた者として、少し異なった視線でも見ることが自分の役目かと思っております。これまで、極めて多くの山岳関係の方々にお世話になりつつ築いて来た数々の事業を引き続き推進することは当然ですが、登山中の疾病・事故の予防やそのための啓蒙活動、増加を続ける登山者のためにより有益なシステム作りという観点からも考えて参りたいと思っております。

臼杵代表理事2 これまでお世話になりました多くの方々、団体、企業の方々に深謝申し上げますとともに、これからも、さらにご理解ご協力賜りますよう心からお願いいたします。

 2019年9月 一般社団法人日本登山医学会 代表理事 臼杵 尚志