日本登山医学会代表理事より ご挨拶

小野寺 昇

川崎医療福祉大学

  令和3年(2021年)6月の理事会において代表理事を拝命した小野寺です。代表理事としてのご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ございません。
 本学会は、昭和56年(1981年)7月に発足した日本登山医学研究会を起源とする日本の登山医学を代表する学会です。設立時の会則には、「本会は、会員の経験、情報をもとに、日本国内外における登山活動の安全のために必要な医学的知見の進展と普及ならびに会員相互の親睦をはかることを持って目的とする。」と記されています。
 設立時の「安全を守る」という理念は、脈々と受け継がれ、日本の登山医学を牽引する中心的な役割を現在も担っています。昭和56年(1981年)の第1回日本登山医学シンポジウムから数えて、今年で第42回目の学術集会になりました。この間、一度も学術集会が途絶えたことがありませんでした。そして、学会誌である「登山医学」も必ず発刊されてきました。当たり前のことを当たり前のこととして実行できる組織力を持っているからです。
 平成18年(2006年)に日本登山医学会に名称変更し、さらなる組織力の強化に舵を切りました。第25回シンポジウム(会長:山本正嘉先生)が開催された大隈半島の会場宿舎(国立大隅少年自然の家)で松林公蔵先生や増山茂先生と膝を突き合わせて深夜まで会則の草案を作り、総会に提案したことを思い起こします。
 その後、平成25年(2013年)に一般社団法人日本登山医学会に名称を変更した時も定款の草案作りに参加しました。一般社団法人になってどのようなメリットがあるのかなど、当時の理事会にて広範囲に及ぶディスカッションが行われました。この時には、きちんと椅子に座って、かなり冷静なディスカッションが展開されたことを記憶しています。メリットは、法人格を持つことによる一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の適用です。日本の登山医学を代表する学会という組織を守り、マネジメントしていくためには、社会の変化に適応した組織力を持たなければなりません。
 1年半ほど前から新型コロナ感染症の影響によって、人流も、物流も、滞っています。殊に登山医学は、フィールド分野での学術調査、実験が主役になっているため、大きな影響を受けています。予測不能な社会変化である時こそ、柔軟に適応することが肝要と心得ます。  これまで行ってきた本学会独自の事業を堅持、継続しつつ、社会の変化に適応した柔軟性をもった学会として発展させて参りましょう。会員の皆様からのご指導を賜りたく、お願い申し上げます。

 2022年6月 一般社団法人日本登山医学会 代表理事 小野寺 昇