登山者検診ネットワークの今後

「登山者検診ネットワーク」のパイロットスタデイーは2006年10月にスタートしてから、
4年の間にほぼ1,000人の受診者を受け入れて検診をおこなってきました。試行錯誤しつつ問診票や診断書の見直し、法的整備、循環器科あるいは呼吸器科専門医にコンサルトするべき要件、さらに診断書作成の統一化をはかるべく、健康度・危険度を判定するための基準づくりなどをおこない、推進しています。この間、受診者を送り出すツアー会社は当初と変わらず三社ですが、受け入れる医療機関は首都圏に限定した7機関から、全国に拡大する準備を開始した結果、徐々に医療機関数は増加し、2010年2月現在、東北、関東、中部、関西地方へと拡大、16医療機関が登録しています。

 定例的に3ヶ月に1回開催している検討会議において数回にわたり議論した結果、パイロットスタデイ―は2010 年9月をもって終了とし、同年10月からは「JSMM登山者検診ネットワーク」と呼称されることとなりました。これに伴って、検診料金は統一せずに、各医療機関が設定することとなり、また、受診者を送り出すツアー会社については、医療機関の予約枠を勘案しつつ、従来の三社に加えて高所ツアー専門の旅行社五社の参画を順次決定する予定です。医療機関については引き続き会員医師に呼びかけて確保を図っていきます。高所勤務者、一般高所登山者(遠征隊)の検診を受け入れる場合の対応方法を取り決めたので、要望があればその都度対応していきます。
低酸素環境体験の意義は様々なケースで確認されており、富士山頂以上の高所体験のない受診者等には従来通り医師の判断で個別に勧めていきます。
「JSMM登山者検診ネットワーク」は今後も倫理委員会の承認を得てレトロスペクテイブに研究をおこないます。
今後の課題として本事業事務局の設置、健康チェックシートの回収・検討等があります。
さらに、将来的には、受け入れ医療機関の医師に日本登山医学会が推進している国際認定山岳医制度に基づく資格取得が求められるでありましょう。

   (文責 堀井昌子 原田智紀)